​アトピー性皮膚炎の治療とスキンケア

アトピー性皮膚炎は長期的な治療が必要です

途中で治療を中止しないでください!

  • アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患の一つで、1,2回塗り薬を使用したからと言って治療するものではありません。

  • 数か月、数年単位での治療が必要です。

  • 症状に合わせて、ステロイド、保湿剤を組み合わせて使用することで、徐々に症状が改善していきます。

  • 薬の使用以外に適切なスキンケアが症状の改善に大きな効果があります。

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎とは、「アレルギー体質の人に生じた慢性のかゆい湿疹」で、症状は以下のようなものです。

  • かゆみがある

  • 皮膚が赤くなり、ジクジクとしたぶつぶつができ、皮がむけたり、かさぶたになったりする

  • 長期的に見ると皮膚が厚く硬くなったり、硬いしこり(痒疹:ようしん)ができる

  • ドライスキン、乾燥肌が目立つ

  • 慢性に経過する疾患で、乳児では2か月以上、その他では6か月以上継続する

  • おでこ、目のまわり、口のまわり、くび・肘・膝・手首などの間接周辺、背中やお腹などに出やすく、左右対称に出る

  • 乳児期は頭、顔に始まり、お腹、背中、四肢に拡大していき、思春期、成人期以上になると上半身(顔、首、胸、背)に発疹が強い傾向あり

診断

​上記の症状に加えて、診断の参考になるものとして、家族の中に気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎を持った人がいるか、本人に気管支喘息、アレルギー性結膜炎などの既往があるか、血清IgE値(アレルギーの指標となる血液の検査)の上昇があるかなどがあります。

治療は3ステップ

​正しい診断、重症度の評価をしたうえで、

  1. 原因、悪化因子の検索と対策

  2. スキンケア(異常な皮膚機能の補正

  3. 薬物療法

 

が治療の基本となります。

治療①:原因を見つけて対策する

原因、悪化因子として2歳未満の場合には多い順に食物、発汗、環境因子、細菌真菌感染などが挙げられます。

3歳以上の場合には咸鏡因子、発汗、細菌真菌、接触抗原、ストレス、食物などが考えられます。

しかしそれぞれのお子さんによって原因、悪化因子は異なるので十分確認をしてから除去や対策を行います。

  • 何か食べると症状が悪化する

  • 何かに触ると症状が悪化する

  • 汗をかくと症状が悪化する

  • どこかに行くと症状が悪化する

など、症状が悪化する因子を把握することが重要です。

原因を特定して、それらを除去することも重要な治療のひとつです。

治療②:スキンケア

アトピー性皮膚炎における主な皮膚機能異常とは、水分保有機能の低下(皮膚が乾燥する)、かゆみを感じやすくなる、感染しやすくなることをいいます。

スキンケアの方法をご紹介します。

  1. 皮膚の清潔さを保つ

    1. 汗や汚れは速やかにおとす

    2. 強くこすらない

    3. 石鹸、シャンプーを使用するときは洗浄力の強いものを避け、十分にすすぐ

    4. かゆみを生じるほどの高い温度の湯を避ける

    5. 入浴後にほてりを感じるような沐浴剤、入浴剤を避ける

    6. 入浴剤後に適切な外用剤(保湿剤、ステロイド薬)を塗布する

  2. 皮膚を保湿する

    1. 入浴、シャワー後は必要に応じて保湿剤を使用する

    2. 自分自身に使用感の良い保湿剤を選択する
      軽微な皮膚炎は保湿剤のみで改善することがあります。

  3. その他に気を付けること

    1. 室内を清潔にし、適温適湿を保つ

    2. 新しい肌着は使用前に水洗いする

    3. 洗剤はできれば界面活性剤の含有量の少ないものを使用する

    4. 爪を短く切り、なるべく掻かないようにする

治療③:薬物療法

​薬物療法は大きく分けて3つあります。

  1. ステロイドの外用

  2. 保湿剤の外用

  3. かゆみのコントロールのための内服薬

③-1. ステロイドの外用

ステロイドは、アトピー性皮膚炎の延焼を制御するために、とても有効な外用薬です。

ステロイドは怖いというイメージを持っている方がいらっしゃいますが、使用するステロイドの強度、使用場所、使用期間をしっかりと守れば、元に戻らないような副作用を引き起こすことはありません。

 

使用せずに炎症がひどくなると、なかなかコントロールできないほどまでっかしてしまうことがあります。

症状が悪化する前にしっかりとステロイド薬を使用し炎症を抑えることが重要です。

 

ステロイド外用薬には強さがいろいろあります。

重症度に加え、個々の皮疹の部位、発疹の様子、及び年齢に応じて選択する必要がありますので、医師と十分に相談してください。

 

一般的には、顔や首は、体と比べて皮膚が薄く外用薬の吸収が良いため、体より1ランク弱いステロイドを使用します。

同様の理由から、2歳未満では、2歳以上に比べて弱いステロイドを使用します。

キャップスクリニックでは、ステロイド薬として作用の弱い順に、

  • Ⅳ群(マイルド)     ロコイド

  • Ⅲ群(ストロング)    リンデロンV

  • Ⅱ群(ベリーストロング) フルメタ

を使い分けています。

ステロイドの具体的な塗り方について、重要度に合わせてご説明します。

<軽症>

皮膚炎を起こしている部分の面積が狭く、炎症の程度もあまり強くない場合は、皮膚炎の部分に、速やかにステロイド外用薬塗布を開始し、皮膚がつるつるすべすべになるまで1日1~2回塗り続け(おおよそ1~2週間)、治ったらステロイドをいったん中止して保湿剤を継続する方法を行います。

 

症状が再燃すればまた、つるつるすべすべになるまでステロイド外用薬を塗布します。これをリアクティブ療法といいます。

<中等症~重症>

皮膚炎を起こしている部分の面積が広く、炎症の程度も強いときの塗り方をご説明します。

 

ステロイド外用薬を毎日2回塗布していったん皮膚つるつるすべすべの状態にした後も、すぐにステロイド外用をやめずに2日に1回、3日に1回と、皮膚炎を起こしていた部分にステロイドを塗りながら予防しつつ、徐々にステロイドを使わない日を増やしていく方法をとります。

 

ステロイド外用薬を用いない日にも必ず保湿剤によるスキンケアは行います。

もし症状がまた出てしまったら再度毎日ステロイドを塗ります。これをプロアクティブ療法といいます。

 

この方法は、皮膚の状態を見ながら計画的に行う必要があり、1~2週間ごとに通院し、こまめに状態を見なが医師の指示に基づいて塗り方を調整していきます。

いずれの方法でも、ステロイド塗る量は人差し指の先端から第1関節まで薬を出した時に、両手2枚分程度とイメージしてください。

塗りは、擦りこんだりせず、たっぷり乗せるように塗布するのがコツです。

皮膚炎が強い部分は皮膚の凹凸が激しく、薄く擦りこんでしまうと、凹凸の部分に薬が乗らず、効果が不十分になってしまいます。

また、汗や汚れなどの皮膚悪化因子はしっかりと洗い流してから、外用を行う必要があります。

 

近年、プロトピック軟膏という、ステロイドとは異なる種類の抗炎症外用薬が2歳以上の小児に適応になりました。

ステロイドのⅢ-Ⅳ群に相当する強さがあります。

特に顔面など、ステロイド長期使用による副作用が気になるときにメリットの大きい外用薬です。

炎症が強い部分に塗るとヒリヒリとした痛みがあるので、ステロイドで延焼をある程度抑えたのちに使用する方法がスタンダードです。

​③-2. 保湿剤の外用

乾燥している皮膚にはしっかりと保湿剤を使用しましょう。

皮膚のバリアが壊れているとかゆみが増強し、そこを掻きむしるとさらに症状が悪化するという悪循環に陥ってしまいます。

しっかりと保湿をし、皮膚のバリアを再生することで、皮膚のかゆみも軽減し、症状が改善していきます。

 

そして、これを継続していくことがとても重要です。

乾燥している肌のバリアの再生は年単位と考えてください。

1~2週間使用して良くならないからと言って、使用をやめるのではなく、しっかりと長期に使用を続けるようにしましょう。

 

保湿剤は、原則として「べったり塗る」ことが必要です。

目安としては塗った場所にティッシュをくっつけたら、そのティッシュが落ちないくらいです。

キャップスクリニックでは保湿剤として

  • ヒルドイド(軟膏・クリーム・ローション)

  • プロペト:ワセリン

​を使用しています。

③-3. かゆみのコントロールのための内服薬

かゆみがかなり強い場合には、知らず知らずに皮膚を掻きむしってしまい、症状が悪化してしまうことがあります。

このような場合には、かゆみのコントロールとして抗ヒスタミン薬(アレジオンなど)を使用することもあります。
 

合併しやすい感染症

伝染性膿痂疹(とびひ)

多くは黄色ブドウ球菌による感染です。

ステロイドの外用で炎症は抑えることができますが、バイ菌が増加してしまう場合がありますので、抗菌薬の外用、内服などを併用します。

 

伝染性軟属腫(みずいぼ)

ポックスウイルスによる感染症であり、アトピー性皮膚炎患者に生じると引っかき傷により多発しやすい傾向があります。

ステロイド外用により増加するので外用を中止したほうがよいと考えられます。

 

カポジ水痘様発疹症

単純ヘルペス感染症ですが湿疹のある場所に感染すると急速に拡大し、全身症状を伴います。

ステロイドの外用は中止し、抗ウイルス薬を外用、内服、または入院して点滴する必要があります。

 


アトピー性皮膚炎は慢性の病気で体質までは治らないこと、根治は困難でもコントロールは比較的容易です。

日常生活を送る上で薬を使いながらうまく病気と共存することで、そんなに困難な病気ではないのだと発想を転換することがアトピー性皮膚炎と向かい合うために必要です。

 

治療のゴールは"cure("治癒)ではなく"care("症状を抑えること)を目指すことです。
うまくアトピー性皮膚炎をコントロールし、長期に皮膚のケアをしていくことがとても重要です。